かつて軒先の行灯に「八里半」とか「十三里」と書いた店があったそうだ。何かと思って近付くと、よい匂いがする。焼き芋だ。距離と芋に何の関係があるのか。
「八里半」は、芋が「栗(九里)に近い」美味さだという謎かけだ。「十三里」は、「栗(九里)より(四里)うまい十三里」と、やはり芋の美味さを言い表している。9+4=13という計算に加え、芋が特産の川越が江戸から十三里の距離にあることも含意している。
さいたま市大宮区高鼻町四丁目の大宮公園に「青木昆陽先生之碑」がある。
「衆議院議員勲一等粕谷義三謹書」とある。粕谷義三は大正12年から昭和2年にかけて衆議院議長を務めた大物政治家で、埼玉県の人である。
埼玉県のさつまいも生産量は特筆するほどではないが、人気観光地「小江戸 川越」では、「栗よりうまい…」の伝統もあってか、さつまいもスイーツが人気だ。
さつまいもタルト、さつまいもプリン、さつまいもチップス、さつまいもバウムクーヘン、さつまいもシュークリーム、さつまいもチーズケーキ…と、食べきれない。
この繁栄を見越していたかのように、本日紹介の顕彰碑は、さつまいも普及の功労者「青木昆陽」に感謝を捧げている。裏面の碑文を読んでみよう。
昆陽青木先生は、元禄十一年、江戸日本橋に生る。学東西を兼ね、篤行大に聞え、偶(たまたま)大岡越前守の知る所となり、徴されて幕府に仕へ、甘藷栽培の普及を図りて、民生を済(すく)ふ所多く、甘藷先生の名遠近に高し。我県亦其恵沢に浴し、遂に特産地となれり。我組合は先生の遺徳を敬慕し、地を氷川公園に相(そう)し、碑を建て以て其徳を頌(しょう)し、是を不朽に伝ふと云爾(しかいふ)。
昭和四年八月 埼玉甘藷商同業組合
顧問正七位勲五等渋谷周蔵撰併書
今でこそ飢饉の心配はなくなっているが、さつまいもは救荒作物として多くの人の命を守ったのであった。
今、さつまいもは絶品スイーツの食材として、人々をほっこりと癒している。その味はモンブランより美味しいのだとか…。すべては甘藷先生のおかげと、私からも感謝申し上げたい。
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