新幹線は夢の超特急のはずだが、夢が吹き飛びそうな現実問題に直面している。九州新幹線西九州ルート(長崎ルートとも)である。長崎県と佐賀県の知事が今月中に協議を行うこととしている。その問題とはいったい何だろうか。
武雄市東川登町大字袴野で新幹線の袴野橋梁が建設されている。写真は武雄南インターチェンジ付近である。
道路の建設工事ならよく見かけるが、新幹線の工事はなかなか見る機会がない。畑の中には巨大なスロープが設置されていた。
こんな美しい風景の中を最新型の列車が滑るように駆け抜けていく。想像するだけでわくわくと期待が高まるではないか。バスでなら何度も行った長崎に、今度は新幹線で行ってみようと思う。
全国が高規格の交通網で結ばれ、人の往来が活発になり都市と地方の格差が解消する。これが夢の実現でなくて何なのか。田中角栄の日本列島改造論は決して色褪せていない。
現時点で決まっているのは、武雄温泉ー長崎間が2022年度にフル規格で開業すること。まったく手つかずで残っているのが新鳥栖ー武雄温泉間の整備についてである。
歴史を振り返ろう。西九州ルートは当初、佐世保経由で計画されていた。しかし平成4年に、距離が短く採算性のよい現ルートに変更され、スーパー特急方式で整備する方針となった。当初の計画通りなら本日の写真の光景はなかったことになる。
スーパー特急方式なら博多発の特急が今までどおり武雄温泉まで来て、ここから新ルートに入り、スピードアップして長崎に向かうこととなる。ところが平成23年に、さらなる高速化のためフリーゲージトレインを導入する方針に変更された。
これなら新大阪から新鳥栖までは標準軌、新鳥栖から武雄温泉までは狭軌、武雄温泉から長崎までは再び標準軌と、軌間は異なっても乗換なしで旅ができる。ところが昨年、フリーゲージトレインの安全性が確保できないことから導入が見送られることとなった。
さあ、どうする? 案は二つあり、一つは、こうなったら新鳥栖ー武雄温泉もフル規格にしようという考えである。新幹線としてはベストだが莫大なコストがかかる。もう一つはミニ新幹線方式にしようという考えである。秋田や山形に先行例があるが、時間短縮にはあまりメリットがない。
終着点となる長崎県はフル規格を強く求めているが、佐賀県は費用負担の割に時間短縮のメリットがないから乗り気でない。佐賀県の中でも新幹線の駅ができる武雄市と嬉野市はフル規格に賛成だが、現在特急が停車する肥前山口駅のある江北町は、新幹線駅ができないのでフル規格に反対している。
現計画では大阪方面から長崎に行くには、博多か新鳥栖で1回目、武雄温泉で2回目の乗換をしなければならない。乗換なしの快適な旅はいつ実現するのか、あるいは、実現しないのか。乗り換えることも旅の楽しみと考える発想の転換が必要かもしれない。
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