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日本百選はさまざまあるが、棚田百選を紹介したことがなかった。もう収穫の時期だろう。干拓地に生まれ育った私は、どこまでも続く整然とした区画の田んぼが原風景である。父は昭和30年代に先進的な大型農業機械の講習を受けていたと聞く。
本日訪ねるのもどこまでも続く田んぼだが、谷底から上へ上へと続いている。棚田には「耕して天に至る」という形容があり、私たちは美しさを表しているように受け止めているが、その開墾や維持管理にどれほどの労力がかかっていることだろう。先人の労苦に敬意を表しつつ、さっそくレポートすることとしよう。
兵庫県佐用郡佐用町大木谷に「乙大木谷の棚田」があり、平成11年に日本の棚田百選に認定されている。
農業には用水の確保が欠かせない。私が子どものころ見ていたのは、バーチカルポンプをディーゼルエンジンで動かし、田んぼに水を入れる風景だ。タッタッタッタと軽快な音とともに水が広がっていた。棚田ではどうか。これだけのたくさんの田んぼにまんべんなく水を配分するためには、水源や水量の確保に工夫があるのだろう。
日本の棚田百選のデータを公開している一般社団法人地域環境資源センター農村環境部のウェブサイトによれば、「乙大木谷の棚田」のスペックは次のとおり。
平均勾配1/20
枚数988枚
戸当り営農規模52枚/戸
開発起源:中世
この地域の人々は、中世以来、毎年同じ営みを繰り返して生活してきた。21世紀の今も効率とは別の価値観で、小さく不定形な田を維持している。平成27年からは谷を結ぶ100mのワイヤにこいのぼりを泳がし、よりよい景観づくりに努めている。
『パパ、お月さまとって!』というエリック・カールの名作絵本がある。パパは長いはしごで本当にお月さまをとってきてあげるという、今年50周年のアポロ11号も真っ青の物語だ。パパははしごで一気に距離を縮めたが、耕して天に至る棚田は一枚また一枚と開墾を重ねて高みを目指す。
棚田に魅せられた人はけっこう多く、ガイドブックが発行され棚田写真家、さらには棚田好きの棚ガールまでいらっしゃるとか。そして棚田で収穫されたコメを楽しみにしている人がいることが最大の強みだ。あのモンベルのオンラインショップでも棚田米を売っている。多くの人の期待に応えるべく、棚田では天に至るかのような勤勉な努力が今も続けられている。
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