カニの中でもカワイイと人気なのがハクセンシオマネキである。「おーい、こっちこーい」と手を振っているから、行こうとするとすぐに巣穴に隠れてしまう。しばらくじっと見ていると、また顔をのぞかせる。環境省は絶滅危惧Ⅱ類に指定して保護を呼び掛けている。
呉市安浦町大字安登の塩谷干潟に「ハクセンシオマネキ」が生息している。
撮影したのは一昨年のお盆8月14日である。夏の繁殖期にオスは、求愛のためにハサミを振り上げるのだという。人間がハサミを振り上げたら警察沙汰だが、このカニの場合は種の保存に必要不可欠な行動だ。
ハサミを振ることをウェービングという。waveには振るという意味があるが、日本では潮を招いていると見て「シオマネキ(潮招)」と呼ぶ。そして、大きなハサミは白い扇のようだから「ハクセン(白扇)」がつく。英名はMilky Fiddler Crabで、乳白色のヴァイオリン弾きのような意味合いとなる。
左右非対称の動物は珍しいなとつくづく感心したが、カレイやヒラメも成長するにつれ非対称になっていくことに気が付いた。ヒトも外見は左右対称でも内臓は非対称だった。進化の過程で何らかの必然性があったのだろう。そういえば、おしゃれに進化したヒトの髪型も非対称であることが多い。
この時季、ハクセンシオマネキはどうしているのだろう。ヒトはコロナ禍で大変な目に遭っているが、カニの世界にはいつもの春が近付いているのだろう。夏になったらまたハサミを振って、今度は福を招いてほしい。
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