人との間に壁を作らないよう心掛けてきたつもりだが、店とか役所では間仕切りのある光景が当たり前になった。おかげで守られているように思えるし、拒否されているようにも感じる。身も心もオープンにできず、信じるよりも疑うことを前提としなければならないのが、コロナ禍最大の厄災だろう。
ただ障壁がすべていけないのではなく、人目を気にせず落ち着きたい時にはパーテーションが必要だし、強いストレスに晒された後は自分の殻に閉じこもって心の回復を図ることも大切だ。本日は間仕切りのある珍しい古墳をレポートする。
赤穂市有年牟礼(うねむれ)に県指定史跡の「塚山六号墳」がある。
このあたりには約60基の古墳が密集し「塚山古墳群」と呼ばれ、このうち最大規模なのが塚山六号墳である。中に入ってみよう。
なんと石室の奥にさらに石室がある。このような豪邸ならぬ豪墳は見たことがない。説明板を読んでみよう。
塚山六号墳は古墳時代後期(6世紀末)の横穴式石室をもつ方墳で、塚山群集墳中で墳丘・石室とも最大規模のものである。
この古墳で注目されるのはその石室構造である。石室の羨道(せんどう)は長さ4.6メートル、幅1.4メートル前後、高さ1.7メートルで、それに続く玄室は左側片袖で全長6.8メートル、幅2.5メートル、高さ2.1~2.4メートルを測る。この玄室のほぼ中央には、左右側壁から間仕切り石が立ち、玄室を前室と後室に区画している。
このように石室の玄室内を間仕切りによって二分するものは珍しく、貴重な例である。
平成5年11月 兵庫県教育委員会
「祇園塚型石室」と呼ばれる貴重な例で、この古墳群には5基確認されている。類例は近畿よりも九州や四国にあり、渡来系氏族との関連が指摘されているという。ただし、間仕切りの用途は明らかになっていないとか。
コロナ禍は発明の母で、パーテーションもさまざまなタイプが考え出された。折り畳んでバッグに入るものや扇子のように広がるデザイン性の高いものなど、社会生活に欠かせないアイテムになっている。いっぽう石室を区切る間仕切りは、現代のパーテーションほどには普及も進化もしなかったようだ。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。