岡山県教委は先月21日、新たに2件を県重要文化財に指定すると発表した。一つは津山藩松平家伝来の甲冑1点で、もう一つは1件なのに1049点もあるという。何かと思えば石器である。形のよいナイフは今でも十分使えそうだ。
岡山県苫田郡鏡野町上齋原に県指定史跡の「恩原遺跡群」がある。右側の標柱には「町指定名勝 恩原湖」とある。昭和3年に完成したダム湖である。静かな湖畔の森の陰に遺跡がある。
湖畔には散策路があるだけで、遺跡らしきものは何もない。近くの駐車場に説明板があるので読んでみよう。
岡山県指定史跡 恩原遺跡群
平成二十二年三月十二日指定
恩原遺跡群は、恩原貯水池周辺に広がる10箇所からなる遺跡群です。
そのうち、恩原1遺跡・2遺跡が岡山大学考古学研究室を中心とする恩原遺跡発掘調査団により発掘調査され、旧石器時代から縄文時代に至る5時期の文化層(生活の跡が残された地層)が確認されました。
そのうち旧石器時代の文化層は4時期あり、最古のもので約3万年前にさかのぼります。それぞれの文化層からは石器製作が行われた場所や、火が使用された場所など、生活の痕跡をうかがわせる箇所が発見され、学術上非常に価値が高いことが評価され、発掘調査された恩原1・2遺跡とその周辺の遺跡(恩原1・2・3・9・10遺跡)計158.424㎡(上齋原2154番2、2154番8)が、岡山県指定文化財(史跡)に指定されました。
「約3万年前」という古さには根拠がある。発掘調査によれば、2万8千年前の姶良カルデラ大噴火による降灰、AT火山灰が検出され、その下にも文化層が見つかっているのだ。
石器の石材には讃岐のサヌカイト、隠岐の黒曜石、松江の玉髄などがあり、さらには北陸から東北にかけてのつながりも考えられるという。旧石器時代の物流がどのような実態であったか、道はあったのか、業者はいたのか。
石器しかない未開社会のように思うのは現代人の偏見で、意外にシステマティックな社会生活をしていたのかもしれない。石器が1049点もあるのだから、その他の道具類も豊かだったことは間違いない。