中国地方の道の駅人気ランキング1位に輝いたことがあるという「久米の里」が国道181号にある。多くの方が映え写真としてガンダムのモビルスーツを写しているが、私ひとりが金属製の五重塔に注目している。なぜここにあるのか。
モニュメントには必ず存在理由がある。本日はその理由を確かめるレポートである。
津山市領家に「久米廃寺跡」がある。県指定史跡である。
中国自動車道が河原でもないのに高架になっている。遺跡を保存するためだ。道の向こうには大きな塔心礎がある。説明板を読んでみよう。
この地には「唐臼」と呼ばれる古代寺院の塔の心礎があり、小字名も「唐臼」と称されていました。(中略)この久米廃寺は、今から約一三〇〇年前(白鳳時代)に創建された寺院ですが、火災にあい、平安時代の前半には廃寺となってしまったようです。最盛期の寺域は東西一三〇メートル、南北一一〇メートルの規模で、主要な建物である金堂・塔・諸堂が、回廊または、築地塀の中に東西に並列して立てられ、東側の一段低い谷の部分に雑房(寺院関係者の生活場所)がありました。この場所に接して東方に「宮尾遺跡」があり、掘立柱建物など二二棟が発掘されました。これは白鳳時代から奈良時代に存在した「久米郡衙」の跡と考えられています。(後略)
平成二年三月 岡山県教育委員会
伽藍配置は、塔を中心として東に金堂、西に講堂を配し、周囲を回廊で囲んだ独特の形式だったらしい。このあたりの地脈は東西方向に流れており、それは中国自動車道、国道181号、JR姫新線、久米川に現れている。もちろん古代出雲道も同じだ。
とすれば、道行く人に「いかがです?」と誇示するに相応しい配置になっていたと考えてよさそうだ。しかも南向きで陽当たり良好。「快適な暮らしにきっとご満足いただけるでしょう」と勧められそうな物件である。ただし、修行には向いていないようだ。
道の駅「久米の里」は、名前を知らずとも「ガンダムの…」でけっこう通じる。ガンダムを中心に西に金属製五重塔、東に店舗を配し、南側のR181を行き交う人々を「癒しはいかが?」と誘っている。この秋は特産のニューピオーネ、シャインマスカットを存分に楽しんだ。