周囲に人家がほとんどないのに駅がある。このような駅を「秘境駅」というそうだ。今日は,秘境駅と呼ばれているがそれほど険しい場所ではない,中国山地中の駅を紹介したい。
ここは新見市神郷釜村にある「新郷駅」。しばらく北に向かうと谷田峠(たんだだわ)という峠があり岡山と鳥取の県境となる。車は開削された峠を越えるが,鉄道はトンネルを抜けていく。釜村の中心部からは1km近く離れ,周囲に人家がほとんどない。それでも,この駅にはテーマソングがある。駅は「村の夢」であり「繁栄の基」であったのだ。
大正末期にこの地に鉄道が敷設されたときには駅ができず,住民は線路添いに坂道を隣の駅まで歩いたという。「その苦労は筆舌に尽くしがたいものであった」と駅の記念碑は語る。
住民の請願により駅ができたのは昭和28年12月15日。駅開設には,日本初の女性代議士,近藤鶴代の努力があった。開設に伴う諸経費約320万円は,村有林を売却して地元で負担したという。
ここは相生行きの普通列車の始発駅(6:52)になっている。今朝も多くの人の夢を乗せて列車は走ることだろう。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。