今年もNHK『坂の上の雲』が待ち遠しい、という方も多いだろう。近代国家日本の青春であるかのように瑞々しい人物像が描かれている。豪華キャストのひとり高橋英樹が演じる児玉源太郎は、日露戦争、二〇三高地攻略の英雄である。
藤沢市江の島一丁目に「児玉神社」が鎮座する。
祭神は児玉源太郎命(こだまげんたろうのみこと)、勝運の神様として知られている。児玉源太郎は徳山藩の出身で、山口県周南市にも児玉神社がある。江の島の児玉神社については、藤沢市文書館の平成16年度収蔵資料展「日清・日露戦争と藤沢」の展示解説で次のように触れられている。
日露戦争全体を指導する上で大きな役割を果たした児玉源太郎は、江の島を賞で、鎌倉の長谷に小亭を結んでいた。そのため、明治39(1906)年に児玉が没した際、江の島に私祭の祠宇が創建され、やがて大正7年(1918)年に公認神社「児玉神社」となった。
この神社の狛犬は中国の獅子のようだ。台座に「台湾総督石塚英蔵」と刻まれている。石塚は第13代の総督(1929~31)である。彼が児玉神社に狛犬を奉献したのは、第4代台湾総督(1898~1906)だった児玉源太郎を追慕してのことだろう。児玉総督は後藤新平民政長官とともに民政に力を注ぎ台湾統治を安定化させた。
やがて、武断統治の必要がなくなり、石塚総督も含めて前後9代の総督には文官が任命されていた。すべて軍人が務めた朝鮮総督との違いはここにある。しかし、石塚総督は最大の抗日事件として知られる霧社事件で辞任に追い込まれた。児玉総督を祀る神社に石塚総督が奉献した狛犬、日本の台湾統治とは何だったのかを考える遺物である。
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