神話に興味を持ったのは、集英社の学習漫画『日本の歴史』1原始・大和時代「国づくりの英雄」のおかげかもしれない。戦後歴史学は神話を排除してきたが、この学習漫画は歴史物語として子どもが興味を持てるように分かりやすく紹介していた。天照大神の岩戸隠れもここで知った。
奈良市柳生町(戸岩谷)に「天乃石立神社(あめのいわたてじんじゃ)」が鎮座する。式内社である。
この神社に本殿はなく御神体の巨石を拝殿から拝む。写真では左の巨石を前立盤、右を後立盤という。祭神について現地解説板は次のように説明している。
天乃石立神社の祭神は、天照大御神、豊盤門戸命、櫛盤門戸命、天盤戸別命となっているが、神体は扉の形をした巨岩(花崗岩)、前伏盤、前立盤、後立盤の三つに割れている。前立盤は高さ六メートル幅七・三メートル厚さ一・二メートルあって、全体が扉の形をしている。
伝説によると、神代の昔、高天原で手力雄命が天岩戸を引き開けたとき、力余ってその扉石が、虚空を飛来し、この地に落ちたのだという。
スサノオの乱行に怒ったアマテラスは天岩戸に隠れて出てこなくなった。あたり一面は闇の世界となり神々は大変困った。そこでオモイカネの案により、岩戸の前でアメノウズメが乱舞し神々は大爆笑。気になったアマテラスは岩戸の扉を少し開けて「何がそんなに楽しいのじゃ?」と問うた。アメノウズメは「あなた様より尊い神様がおいでになっておられますよ」と答える。と同時にアメノコヤネとフトダマが鏡を岩戸の前に差し出す。自分の姿を見たアマテラスは「えっ、誰?」と扉をさらに開ける。その時、扉の側で待ち構えていたタヂカラオが一気に扉を開けてアマテラスを外へ出してしまった。すぐにフトダマは「もう入ってはなりませぬ」と注連縄を張り、世に明るさが戻ったのであった。『古事記』は以上のように伝えている。
タヂカラオが投げたその扉が上の写真の石だったのだ。とても大きいので道からではレンズに納まらない。山の斜面に登って写したくらいだ。ただ、長野県の戸隠山にも天岩戸が飛来して現在の姿になったという伝説があり、迫力のある山容がそれらしく見える。一方で、天乃石立神社の岩戸は造形の美しさ、不思議さに興味が注がれる。信仰の発生する場所には理由があるのだ。
神社近くの道で木漏れ日がピンホール現象によって地面に幻想的な模様を描いていた。これもアマテラスのおかげだ。ここは大和国、神に近い場所なのである。
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