直接民主制があるのはスイスだけかと思ったら、日本でも実現するかも、というニュースである。今月12日、高知県土佐郡大川村の和田村長が、議会に代わって有権者全員で構成する「町村総会」について調査・研究を進める考えを表明した。この町村総会、日本初というわけではない。過去に一度だけ設置されたことがある。
波濤の向こうに「八丈小島」が見える。
ハイビスカスの向こうに「八丈小島」が見える。
この八丈小島は、八丈島を中心とする八丈町の一部である。現在は無人島だが、島の南東部に「宇津木村」という自治体が昭和30年まであった。ちょうど写真に写るあたりを村域としていた。
昭和25年の国勢調査では人口66人、うち有権者は44人である。この小さな村で、日本では珍しい直接民主制の集会「村民総会」が、昭和26年から30年まで設置されていた。このたび大川村が問題提起するまで知らなかったが、地方自治法に次のような定めがあるのだ。
第九十四条 町村は、条例で、第八十九条の規定にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる。
第九十五条 前条の規定による町村総会に関しては、町村の議会に関する規定を準用する。
意外にあっさりした規定である。大川村では運営のノウハウを知りたいところだが、宇津木村の村民総会の詳細が分かる行政文書は残っていないという。
それに宇津木村と大川村では、人口規模も面積も大きく異なる。大川村の人口は離島を除いて全国最少で約400人、うち有権者が約350人である。最少とはいえ、各地域から人が移動してくるだけでも時間はかかる。議会を通じての間接民主制を存続させたいのが住民の本音だ。過疎と高齢化の進展による議員のなり手不足に備えて、苦渋の選択をしているわけだ。
いっぽう宇津木村の村民総会は、封建的なムラ社会から民主主義の社会への転換を図るという側面があったようだ。住民の主権者意識を高めるのである。4年間とはいえ、後世に参考となる先例を残してくれた。
18歳選挙権が実現したものの、多くの国民にとって政治は別世界の出来事だ。平成の市町村大合併により、身近に議員さんを見かけることもなくなった。首相の地元の蕎麦屋のメニューから「もり」と「かけ」がなくなった、というジョークが笑えないご時世である。ロシア革命100周年でもあるし、ここは国民が奮起し直接民主制を志向してはどうだろうか。
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