『軍師官兵衛』のオープニングで、草原をCGの馬が疾駆するシーンを憶えておられようか。大河ドラマにふさわしい重厚な音楽と美しい映像から、何かが起こりそうな予感がして期待が高まったものだ。平均視聴率は関西で18.2%あったという。
ちなみに『西郷どん』は、10月7日放映の回で9.9%(関東)を記録したとか。これから西南の役に向けてV字回復を果たしてほしいものだ。
兵庫県神崎郡神河町川上に「砥峰(とのみね)高原」がある。神河町は、神崎町と大河内(おおかわち)町の合併により誕生したのでこの名があり、砥峰高原は旧大河内町に位置する。
とのみね自然交流館の前に舞台があり、『軍師官兵衛』『平清盛』という大河の傑作、そして映画『ノルウェイの森』のロケ地となったことが示されている。
確かに、絵になる風景、草原のイメージそのものである。『軍師官兵衛』のCG馬が駆けたのもこの草原であった。訪れたのは夏だったので緑が鮮やかだが、今ごろの季節はススキが銀色に輝いているそうだ。
この高原は雪彦峰山県立自然公園の構成資産である。近くの峰山高原もその一つで、ここにあるリゾートホテル「リラクシア」では、夢のような贅沢な時間を過ごすことができる。
ただ、こうした美しい風景は自然まかせでは維持できない。毎年3月に山焼きを行うと灰が肥料となって新芽がよく出る。写真の夏は、ぐんぐん成長しているところだ。そして秋にはススキの穂が風に揺れ、冬となれば雪が一面をおおう。誕生から成長、そして死。さらにはまた新たな生へと、輪廻転生が繰り広げられている。
ここは起伏がゆるやかで、心地よい散策ができる。地学的には「化石周氷河斜面」といい、氷河の周辺で凍結による岩石の破砕が進み、なだらかな斜面が形成されたが、現在ではその動きが停止している地形である。氷河の周辺部に形成された斜面で現成ではなく化石化した地形という意味だ。最終氷期にこのあたりの気温は7~8℃低下していたという。
地形の形成要因はそれだけではない。たたら製鉄のために大量の砂鉄が採取され、鉄穴流しが行われた場所でもあるのだ。斜面を削って土を水路に流し、砂鉄を採取した。その時代には現在とは大きく異なり、地面むき出しの土色が広がっていたことだろう。
美しい草原は、日本の原風景がそのまま残っているように思えて、実のところ、人々の努力によって維持されているのであった。草原の中を従者とともに悠然と進む乗馬の武士。こうしたイメージも、もしかすると空想に過ぎないのかもしれない。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。