小学生の頃、母親に備中松山城へ連れて行ってもらった。備中高梁駅まで国鉄伯備線に乗ったのだが、当時まだ気動車だった。家族旅行などめったになかったから、大喜びで車窓にへばりついていた。へばりつくといえば、その頃の線路には時々白い紙がレールや枕木にへばりついていた。トイレが垂れ流しだったらしい。その伯備線も、いまや陰陽連絡の大動脈として機能しており、一日に何本もの特急やくもが快走する。
高梁市川面町(かわもちょう)の川面踏切の手前で撮影した「やくも17号」出雲市行の雄姿である。列車はこの後、備中川面、方谷、井倉を通過する。本日のレポートは、井倉駅を出てからどこを通過するのかという話題である。
新見市足見(たるみ)に「伯備線旧線跡」がある。自転車歩行者道として利用されている。
井倉駅と石蟹駅の間を高梁川が蛇行しているが、あたかもドル記号の縦線のように列車は幸田トンネル、塩尻トンネルを通過する。このように経路が変更されたのは昭和58年のことで、それまでは高梁川に沿ってS字に進んでいた。
昭和3年に全通した伯備線では、陰陽をより早く結ぶため複線化や経路変更、電化など様々に努力が重ねられてきた。381系という振り子式車両の導入もそうである。今や最後の国鉄形特急電車として貴重なのだが、2022年度から新型車両に置き換える計画があるのだという。振り子式は気持ち悪くなるなどと散々に言われながらも、高速化に貢献したことは確かだ。
高速化が期待される陰陽連絡には、もう一つの大計画がある。全国新幹線鉄道整備法に基づき、昭和48年の基本計画に示された中国横断新幹線、いわゆる伯備新幹線である。やくもで約2時間半かかる岡山松江間を約1時間で結ぶという。まさに超高速。
だが本当に実現するだろうか。夢として語られることはあっても具体的な計画は一切ない。この度のコロナ禍でJR西日本の体力はずいぶん消耗することだろう。夢でさえ語ることのできない状況である。それでも定時運行により利便性の確保に努めている社員の方々に心から感謝し、ささやかながら本記事を捧げようと思う。
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