母親によれば、蒸気機関車を見て腕を主連棒のように回転させ「ゴッ、ゴッ」と言っていたというから、確かに私の目に前に現役のSLがいたのだろう。まったく記憶にない。踏切手前の道路標識ではよく見かけるが、実際に走る姿を見たことがない。観光目的で走っている路線もあるようだが近くにない。本日は公園に展示されているSLの紹介である。
高松市番町二丁目の二番丁公園に「C58形蒸気機関車」が保存展示されている。有名なデゴイチに対して、こちらはシゴハチと呼ばれる。よく見かける形式だそうだが、私にはほとんど区別できない。全国各地に静態保存機があるらしい。
それほど珍しくないのかもしれないが、当たり前の毎日で見かけるものではなく、子どもたちには(いや私にも)大人気だ。どのような経歴をもつのか、近くの高松工芸高校の生徒さんが制作した説明板を読んでみよう。
蒸気機関車の説明
型式C58
C5812号諸元
最大長さ 18.275メートル
最大高さ 3.900メートル
最大巾 2.780メートル
機関車重量 53.60トン
炭水車重量 18.50トン
動輪直径 1.520メートル
おはなし
昭和13年9月12日に川崎車両という会社でつくられ最初は出水機関区(鹿児島県)ではたらき、昭和17年10月に津山機関区(岡山県)にいき、昭和18年1月に高知機関区にきました。
それから昭和44年9月ディーゼル機関車にかわるまで四国の各線区を走りつづけました。
そしてこの蒸気機関車が生まれてから走った距離は2,215,923キロメートルで、これは地球をほぼ55回まわったことになります。
この内、四国で走った距離は1,944,483キロメートルで、地球をほぼ50回まわったことになります。
地球を55回なんぞ、コズミックで銀河鉄道並みのスケールだ。ちなみに999に登場する機関車はC62であってシゴハチではない。ここまで天文学的になると、地球55周であろうが、2~3周であろうが実感が湧かない。走りに走り、走り続けたということだろう。
分かりやすい例でいえば、四国八十八箇所を1周すると1,150kmくらいだから、このシゴハチは1690回お遍路を回ったことになる。現在の山口県大島郡周防大島町椋野出身の中務茂兵衛という人は、慶応二年に発心して大正十一年に亡くなるまでに280回の満行を遂げたというから、そのすごさが分かる。というより、茂兵衛さんのほうがよほどすごい。
引退したシゴハチが公園で遊ぶ子どもたちを静かに見守る。「トーマス」だとか「SLマン」だとか、キャラクター化した仲間たちはアニメ界で今も現役だ。私は阿川弘之さんの「やえもん」によく遊んでもらった。ザトペックという人間機関車もいた。こちらは金メダリストだ。これらのイメージはすべて、ゴッゴッシュッシュと力強く動く蒸気機関車から生まれたのだ。
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