黒土(こくど)といえば黒土地帯。ウクライナからシベリア西部に広がる肥沃な地域である。チェルノーゼムというロシア語も黒い土地という意味があるらしい。枯れた植物が堆積してできた黒い土なのだ。
我が国にも黒土という地名が各地に存在する。青森県、新潟県、和歌山県、兵庫県、岡山県、福岡県、大分県などで、多くは「くろつち」だが、兵庫県だけは「くろづち」である。酸性土壌の日本に肥沃なチェルノーゼムがあるというのか。現地に行ってみよう。
宍粟市千種町黒土(ちくさちょうくろづち)に市の名勝「黒土の滝」がある。近くには「黒土の滝 千種町指定文化財」という旧町時代の朽ちかけた木製標柱もある。
地理院地図を見ると、黒土川に滝を示す地図記号があり、その先に「滝の尻」という地名も掲載されている。古くから親しまれてきた名勝なのだろう。滝という地形は鳥取県の「雨滝」で紹介したように、溶岩が関係することが多い。
火山地帯は過酷な土壌条件だから、肥沃とは真逆のはずだ。コトバンクで紹介されている『日本歴史地名大系』兵庫県宍粟郡千種町の「黒土村」の項には、次のような記述がある。
明治一〇年(一八七七)の御用留書(千種町役場保管文書)に「地味大に悪敷く土質黒マサ多くして土力劣り」とあり、村名は黒ボコとよばれる火山灰層の土地柄に由来するか。
黒ボコとか黒ボク土というのは、火山灰に由来する土壌で、主に畑地に利用されている。各地の黒土地名も同様に黒ボク土由来なのかもしれない。ここに積もった火山灰は、どの山で噴出したのだろう。扇ノ山か氷ノ山か、それとも西にある三国山か大山か。火山灰の降り積もる大噴火時代。遠い昔の物語である。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。