広島県では現在、27の自然環境保全地域を指定している。このうち滝の名を冠しているのが二つあり、「常清滝」は「1億年前の崖を流れ落ちる水」で紹介した。本日はもう一つの「品の滝」である。この滝は音よし、姿よし、アクセスよしで、しかも三度楽しむことができる。
三次市甲奴町宇賀と世羅郡世羅町戸張の境に「品の滝」がある。地図は一の滝である。
私は上流からのアクセスで、三の滝、二の滝、一の滝の順に訪れた。写真も上からその順である。一の滝は境界にあるが、二の滝と三の滝は宇賀地内にある。散策路入口(甲奴口)にある説明板を読んでみよう。
品の滝
広島県自然環境保全地域指定
滝川はその源を城跡頭士山に発し、品谷土橋川・刈屋川と合流し吉舎町雲通を経て、馬洗川に注ぐ清流である。滝の所在地は、三次市甲奴町宇賀深山地区で、昔からこの一帯を深山峡と呼んでいる。深山峡と呼ばれるように、川に沿う一帯は奇岩怪岩に富み、渓流の所々に深淵があり、その景観は絶佳である。3月早々になると「谷いそぎ」が開花して春を告げ、その他山つつじ等諸々の野花が咲き競い、新緑濃き夏は冷涼の気漂よい、秋ともなれば全山紅葉して油絵の如く、冬の景色も又格別である。
一の滝
高さ15m・幅広い白布を流したように垂直に落ちる水は、銀色に生え轟音と共に滝壺に水しぶきをあげ、夕日の落ちる頃は、特に美しい。
二の滝
高さ7mで水は垂直に落ち、西側の岸壁は直立して数10mに及ぶ等、その姿は一の滝を一廻り小さくした感じで、女性的である。
三の滝
高さ14mあって水は垂直に落下するが、中程の二か所に大きな岩が突出し水しぶきは霧となって晴天の日は終日虹を現わし、男性的な秘境である。
甲奴町誌より抜粋
川の名は分かりやすく滝川。山容の美しい頭士山は、今から800~1200万年前に備北層群(新生代新第三紀中新世)等を貫いて噴出した玄武岩の山(玄武岩鐘)である。
頭士山から滝のあるあたりにかけては「品谷(しなだに)」と呼ばれ、頭士山の麓には「品中央」という地名もある。「品」という地域にあるから「品の滝」と呼ばれるのだろう。
岩にせかるる滝川の水は火成岩の台地を削りながら、戸張川、馬洗川を経て江の川に注ぐ。一の滝と三の滝の高低差は74mほど。散策しやすくて見応えがあり、品まで備わっている優れた滝であった。
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