今年1月4日に安倍首相が伊勢神宮に参拝した。首相の伊勢参拝は民主党政権を含めて恒例行事となっている。国民の代表が初詣をして我が国の安寧をお祈りすると言えば聞こえがいいが、国家神道じゃあるまいし政教分離の原則からは疑念が生じる。政教分離をしないなら、今後は鎮護国家思想に基づいて仏教にも配慮し、東大寺に参詣するよう提案したい。
そんなことはさておき、歴史上のVIPも伊勢神宮を訪れている。平清盛は三度、織田信長は一度、足利義満に至っては十一度参拝しているという。本日は足利義満の旅の史跡を紹介しよう。
岐阜県養老郡養老町明徳(みょうとく)の船著(ふなちゃく)神社は「足利義満船着場」である。町の史跡に指定されている。
時は明徳四年(1393)9月7日、前年に南北朝合一を成し遂げた義満は、神のご加護に御礼を言上するためか、気持ちに余裕ができたからか、初めて伊勢神宮に参拝した。その帰途、滝見物に養老へ立ち寄っている。軍記物『足利治乱記』には、次のように記されている。
爰(ここ)に美濃国主土岐弾正忠頻(しきり)に言上して、養老の滝御見物のことを勧め申すに依って、十二日に山田を御立ありて、美濃へ御移り、養老其他御見物ある。
義満は、美濃守護の土岐氏の強い勧めで、養老の滝を見物した。この時、義満を乗せた船が着いたのが、このあたりにあった港だという。ただし『足利治乱記』の信憑性には疑いもあることから、実際のところよく分からない。ただしこの年、義満が伊勢神宮に参拝したことは確かで、その道すがらに名所旧跡に立ち寄ったとしても何ら不思議ではない。
安倍首相の場合は日帰りだったから寄り道する余裕がなかったようだ。繰り返しになるが首相には、宇治山田駅から近鉄奈良駅に向かって東大寺へと足を延ばし、我が国を代表する神様と仏様の両方を拝んで欲しいものだ。
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