滝は日本各地にあるが、集中して存在する場所を「四十八滝」という。比較的有名なのは赤目四十八滝、那智四十八滝だろうか。四十八滝に48の滝があるわけでなく、名のついた滝の数は少ないことが多い。本日は中国地方を代表する四十八滝、「雨滝四十八滝」を訪れたので紹介しよう。
国府町観光協会が現地に設置した案内地図には、 雨滝、布引の滝、仏谷渓谷、夫婦滝、親子滝、比丘尼滝、樋滝、平滝、筥滝、馬淵滝が示されている。このうち3つをレポートする。
鳥取市国府町雨滝に「布引の滝」がある。駐車場から歩き始めて最初に見る滝である。これを一反木綿と言えばイメージが違うが、反物をさっと垂らしたような優しい滝である。説明板を読んでみよう。
布引の滝(ぬのびきのたき)
純白の絹糸をほぐして布を織り、岸壁に沿ってかけ流したように美しいのでこの名がつけられました。
この滝の水は、山の中腹より湧き出る地下水なので、長期の日照りにも豪雨にも水量が変わることはありません。
雄大で男性的な雨滝と、女性的な布引の滝は対照的です。
山陰海岸ジオパーク
地下水の滝だという。川の流れならイメージできるが、地下水の流れや水量は考えたこともなかった。私たちの足元でも常に水は動いていることを知る好例であろう。
布引の滝から少し進むと大迫力の「雨滝」がある。
龍のつく滝の名はよくあるが、雨は珍しい。雨のように降る滝だろうか。この雨量は土砂降りどころではない。おそらく、近付くと飛沫が雨のように降りかかるからだろう。夏は舞い上がるミストが心地よい。説明板を読んでみよう。
雨滝(あめだき)
雨滝は、扇ノ山から流れ出た水が40メートルの高さで落下している「鳥取県一の大飛瀑」です。トチ、ケヤキ、ブナなどにおおわれた滝口からとめどなく飛沫をあげて落水する様は壮観で、平成二年に「日本の滝百選」に選定されました。
滝の中に露出している黒っぽい岩は、「両輝石安山岩」といい溶岩が冷えて固まるときに規則正しい割れ目ができる「柱状節理」が見えます。また、滝口の左右両方にある白っぽい大きな柱状節理はカンラン石玄武岩で形成されています。
古来より有数の霊場として善男善女の修行の場、お遍路さんの信仰の場として活用されてきました。滝の前にある不動明王に祈願すると、精神病が治ったり商売が繁盛するなどの霊験があるといわれています。
また、滝壷付近では強い滝風が吹き、涼しい霧が全身に吹き付けられますが、昔から「雨滝に詣った年の冬は肌が荒れない、滝の霊水が寒さを守ってくださる」、「美人になる」などの言い伝えが残されています。
山陰海岸ジオパーク
岩石の名称が二つ登場した。両輝石安山岩と橄欖石玄武岩。古い火山活動で出来た両輝石安山岩の上を、扇ノ山が噴出した橄欖石玄武岩が覆い、その縁辺部にいくつもの滝ができた。なかでも美しい節理が見られるのがこの滝だ。
雨滝から北側の山を越える細い道を歩くと別の川に出る。そこに「筥滝」がある。
節理によってできた段差に水が当たってしぶきが上がり、美しい虹が見えている。説明板を読んでみよう。
筥滝(はこだき)
縦横3m、深さ1mばかりの岩の重箱に満々と碧い渓流があふれていて、その水が流れて下の重箱に落ち、またあふれて下の重箱を満たしていきます。こうして四段の重箱が谷の斜面にならんで特異な滝をつくっています。
露出している岩は「両輝石安山岩」といい、溶岩が冷えて固まるときに、規則正しい割れ目ができる「節理」が見え、 四角いサイコロ状の形状が特徴的です。
この滝壺の深さはどのくらいあるのか、三間(約5.4m)もある竹竿でも巻き込んでしまうほどで多くの人々に恐れられてきました。それを物語るような伝説が残されています。
<伝説:亀が渕>に続く。
山陰海岸ジオパーク<伝説:亀が渕>
今は昔、雨滝の村に亀という心のやさしい男の子がいた。不幸な生まれで早くから両親に死に別れ、心の悪い義理の父に養われ、毎日苦しめられながら何一つ不足も言わずに働いていた。
ある年の春のことである。雪解け水で滝の水かさは増して一段と凄かった。亀は父と二人で渕の横の山で薪を伐っていたが、どうしたはずみか手に持っていた鉈を録り落した。鉈はずるずると山肌をすべり、下の湖に沈んでしまった。
心の悪い父は亀を叱りつけた。そうして恐れてしり込む亀に渕の中の鉈を拾うよう命じた。亀はこわごわ渕に入った。しかし、それっきり上がっては来なかった。
その後人々はこの滝つぼのそばに来るたびに亀の悲しげな声を聞くようになった。そうしてこの渕を「亀が渕」というようになった。
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これは児童虐待以外の何ものでもない。いち早く通報しなければ。爛漫と咲き誇る桜樹に死体が埋まっているように、虹の架かる瀑布では虐待があったというのか。権力を有する者は権力を抑制的に行使するのが政治の要諦。親子関係でもまた同じ。躾けという言い訳は通用しない。
この滝では龍のうろこかと思わせるような岩肌から、大地のドラマを感じるのが一番いい。火山によって生じた溶岩が冷却によって節理を生じ、新たな溶岩流の周縁部で滝が形成された。私たちの地球は生きている。永遠なんて何一つないのかもしれない。