底に穴が開いたら使いものにならなくなるのが普通だが、川底の穴なら水が抜けたりしない。旅をしていると、時々見かける珍しい自然現象「甌穴(おうけつ)」である。本ブログでは、ずいぶん以前に「川底に開いた穴」で兵庫県の甌穴をレポートしたことがある。本日は広島県からの報告である。
庄原市東城町東城と川東のあたりに「東城川の甌穴」がある。
川底に人工的に開けられたかのような穴が見える。自然現象だというが、いったいどのようにして形成されたのだろうか。説明の石碑には、次のように記されている。
広島県天然記念物 東城川の甌穴
昭和29年4月23日指定
東城川が大字川西川東東城を流れる付近で新生代第3紀中新世の泥岩砂岩礫岩層からなる河床に直径20cmから2mにおよぶ数多くの甌穴(ポットホール)が分布している。
甌穴は河床に含まれている礫がぬけでた小さい穴に砂礫がはいり渦流の力によってできるほかいろいろな成因が考えられる。
東城川の甌穴は他地域のものに比較して量的質的にも豊富でそのおもな特色はつぎのとおりである。
1東城川の3.5kmにわたって8群も存在し広域で質量ともに大である。
2新第3系の砂岩層砂礫岩層礫層の各層のうえに作られているため形態が多様である。
3地層の複雑性と軟弱性とが甌穴の発生率を高めている。
4地層の軟弱性と浸食速度の大きなことが甌穴成長時間を短縮している。
新第三系は新第三紀にできた地層のことで、中新世に形成されたものは中新統と呼ばれる。以前の記事「二千万年前に津山は海だった」で紹介した礫岩のように、中国山地には古瀬戸内海によって形成された堆積岩が分布している。
砂と礫が入り混じる複雑な地層とその後の隆起・浸食により、川底に穴が開いた。しかも今が完成形ではない。これからも大地は変化していくだろう。変わらないように見えて変わっていく自然。変わることを恐れているのは私だけなのかもしれない。せめて仕事に穴は開けないようにしたいものだ。
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