地球の表面は知り尽くされているように思えるが、時に新発見がある。令和3年9月10日、奄美市と同市在住の写真家が「奄美市名瀬小湊地内で巨大滝を発見した」と発表した。形状は段瀑、海岸瀑、分岐瀑で落差181m。九州一だという。アクセスが容易でないため、今まで見つからなかったのだろう。
本日紹介する滝は、小さな滝がいくつも連なり、川そのものが滝のようにも思える。アクセスは容易で、川に沿って登りながら観賞できる。
岡山県和気郡和気町矢田に「長楽の滝」がある。写真は上から川の流れに沿って並べている。
滝名はさらに下流にある杉澤山長楽寺にちなんでいるようだ。このお寺は報恩大師の備前四十八ヶ寺の伝統を継承する名刹である。元は東方の山上にあったということだ。
ヘアピンカーブの奥にあるスペースに駐車して川に行き、上流へと足を運ぶ。たくさんの滝を見かけるが、いったいどれが本物の長楽の滝だったのだろう。山陽新聞サンブックス『岡山の滝』では、次のように説明されている。
優に一キロを上回る峡谷全体が折り重なる大岩石群であり、全体が躍動感溢れる早瀬となっており、水量の多さと相俟って、他の滝とは様相を異にした、激流と滝が延々と連なる凄まじい渓谷となっている。
確かにその通りだ。「孤独のグルメ」の食レポと『岡山の滝』の滝レポは、どうしてこんなに表現が豊かなのだろう。読む人をその気にさせる名文である。もう一つの滝レポ名作、岡山文庫『岡山の滝と渓谷』では、こうだ。
岩にあたって白くくだける激湍は、周囲の異様さと相俟って、知的活動の段階を越えた、心理状態に引きづりこまれるように思われた。
まるで異世界に足を踏み入れたかのようだ。滝音を聞きながら無心で荒れた斜面を登るのだから、確かに知的に考える余裕などない。私が考えていたのは、地球が海に囲まれた平面で、端へ寄り過ぎると船ごと落っこちる、という古代人の地球観だ。たぶん地球の端はこんな感じなのだろう…と。だが本当は、吉備高原の端っこ、だったのである。